高い金属音が鳴り響いた。

「…なっ」

振り下ろされた従子の鞭を止めたのは、四郎の鉄扇だった。

「落ち着いて、従子。彼女の言うことも一理ある。三蔵兄さん。」

四郎は従子の鞭を弾くと、スーツの内ポケットに鉄扇をしまった。

「四郎と彼女の言う通りだ。確かにここで争っても無益やもしれんな。」

三蔵はそう言ったが、少し煮え切らないような表情を浮かべていた。

それを警戒してか、木村も少し身構えたまま、朝日の目の前に庇うように移動した。

「……では、僕らは下がらせてもらいます。」

木村はそう言うと朝日の手を取り、踵を返して駆け出した。

「え、あっ…」

「兄様!本当に逃がしていいの!?」

「……。」

「従子。三蔵兄さん。落ち着いて。」

四郎はそう言うと、薄い笑みを浮かべた。

そしてゆっくり倒れている重三に歩み寄る。

「重三。起きて、重三。」

「うっ…四郎…兄様…!?」

目を覚ました重三は四郎を目にするとすぐさま起き上がった。

「し…四郎兄様、それに三蔵兄様、従子。お見苦しいところをお見せしてしまい…」

「そんなことはいいよ、重三。それよりあの女、逃げちゃったけど…どうする?」

四郎は微笑みながら重三にそう尋ねた。

「……さ…"桜組"の名に泥を塗るわけにはいきませぬ。この重三が必ず連れて参ります。」

「うん。じゃあすぐに行って。僕の部下を何人かつけるから。」

「はっ!ありがとうございます、兄様。」

重三はよたよたと立ち上がると、肥った体を揺らしながら走っていった。

「……この方が面白い。"蒼眼"にあの女…どこまで逃げ切れるかな?」

四郎はそう言って再び微笑んだ。

狂気をその目に宿しながら。