世界で一番大切なもの

「姉ちゃん、泣いてます」



歩き始めてすぐ、潤が言った。



「コンビニまで近いんで、すぐに本題入らせてもらいますけど」



道の上に転がっていた石ころを潤が蹴る。



ころころ、と石は転がっていく。



「桔平さん、桔平さんのお母さんと姉ちゃんが会って話したこと知ってますか?
桔平さんがヨーロッパ行った前の日に」



「は…?」



俺は間の抜けた声を出す。



そんなの…知らない。



葵と母さんが?



あの2人、何の接点もないのに?



母さんに至っては、葵のこと、全く良く思ってなんかないのに。



じゃなきゃ…、



俺は呆然として潤を見る。



「やっぱり」



心底驚いてる俺を見て、潤はため息をついた。



「俺やっぱり京介さんが何考えてんのか、よく分かんないや」



眉間に皺を寄せて、潤が呟く。