世界で一番大切なもの

どれくらい、そこに立っていたのか。



明るかった日は、少しずつ傾きかけていた。



そんな時、カシャンと音がして玄関から人が出て来る音がして、俺は慌ててその場を立ち去ろうとした。



「桔平、さん…?」



名前を呼ばれて、振り返ってみると

「…潤」

潤、つまり葵の弟が立っていた。



日向と同じ年だから、2個下、か。



2年前からすると、やっぱり随分と大きくなったな。



「帰って、来てたんすか…」



「おう、昨日な」



「知らなかった。姉ちゃんも日向も、何も言わねーから」



伏せ目がち、苦笑いを零す潤に、俺は微かな微笑みだけを返す。



そっか、日向と潤は同じ学校だっけ。



「…俺、コンビニに行くつもりなんすけど、そこまで一緒してもいいですか?」



「ん、ああ…」



遠慮がちに聞いてきた潤にそう返事をして、

潤が隣りにくるまで待っている間に、もう一度葵の部屋を見上げた。



来た時と変わらず、閉まっているカーテンにまた胸が痛くなった。