世界で一番大切なもの

京介の家を、おイネさんの丁重な見送りを受けて出た後、



そこから40分ほど歩いて自宅へ帰った。



いつもはバスを使うけど、今日はゆっくり歩きたい気分だった。



ちょうど俺らの家の間を半分したところに葵の家はある。



立ち止まって、2階にある葵の部屋を見上げてみる。



まだ日は明るいというのに、葵の部屋はカーテンが閉まっていて暗かった。



あのカーテンが、俺らの間を仕切っているような、

そんな感じがして、なんだか嫌だった。



…泣いてるのかも。



直感的にそう思った。



もちろん、というか客観的に、振られたのは俺だけど、

京介が言ったように、葵は嘘をついて俺を振った。



だから、きっと俺よりもさらに傷ついてるのは、葵のはずなんだ。