世界で一番大切なもの

「ヒナちゃんのことは、…俺、なんとか出来るかもしれないし…」



「は?」



「ちょっと考えがある」



「考え…?」



「前から考えてたこと。今はまだ言えないけど」



京介は大きく伸びをしてソファーに転がる。



そろそろ眠いのか。



こいつの1日の半分は睡眠で成り立ってるからな。



それを、きっと俺のために起きていてくれたんだと思う。



俺はフッと小さく笑みを零して立ち上がる。



「帰るの?」



京介が目だけで俺を見る。



「おー。眠いんだろ?」



「まあね」



「悪かったな、…ありがとう」



俺が言うと、京介は右手だけを挙げて答える。



再び京介が目を閉じて、俺はドアの方へと歩いて行った。



ドアを開ける前にもう一度京介の方を振り返ったけど、



もう眉は下がって寝息が聞こえてきていた。



それを見ると、俺は何も言わずに部屋を出た。