世界で一番大切なもの

その日向の最後のメール。



いつものように、家のこと、学校のこと、自分のこと。



葵のこと、京介のことが事細かに書いてあった。



気になったのは最後の文。



『お兄ちゃんはちゃんと好きな人と……葵ちゃんと幸せになってね』



……こう、締めくくられていた。



「それって…」



京介が怪訝そうに眉をひそめる。



「ヒナちゃん、利用されようとしてる?」



俺は黙って頷く。



帰ってきたら案の定、日向のお見合いが進められていた。



あの両親は、俺だけじゃなく日向までも家のために犠牲にしようとしているらしい。



そんなの……許せない。



俺は深くため息をついて、手の平で覆う。



「桔平…」



「でも、帰ってきたところで日向に何かしてやれるわけじゃないんだ」



自分の無力さに、いい加減嫌気がさす。