「お前と日向だけ、お帰り、って言ってくれたのは」



「……葵、は?」



「…名前すら、呼んでくれなかった」



俯き気味に言う俺。



たった一言。



お帰りと、葵に言ってもらえないだけで



こんなにも落ち込む。



「何?望まれない帰国だったの?」



「んー、まあ予定より一年早いからな…って、だから笑うなって」



こっちは真剣に話しているのに、京介は肩を揺らして笑ってる。



「それくらい他人の前でも笑えばいいのに」



「やだよ、めんどくさい」



即答された俺の呟き。



京介は、さっきまでとはうって変わって心底嫌そうな顔をしている。



そんな京介に、今度は俺が呆れてしまう。



京介は容姿端麗で、頭も良くてモテるのに、



他人と関わることを極端に嫌う。



俺と葵、それから俺の2つ年下の妹の日向以外の人間にはすごく冷たい。



自分の親にでさえ、も。