「俺からの手紙……読んでもないだろ?」



「………」



あたしは立ち尽くしたまま、顔を上げることも出来ない。



気のせいかな…?



桔平の声が、震えてるような気がするの。



その声が、あたしの胸をギュッと締め付けて痛い。



「名前、呼べよッ……」



次の瞬間、あたしは桔平の腕の中にいた。



潰されそうなくらい、力強く抱き締められる。



「ダメッ…!」



あたしは、その胸を押してそこから出ようとする。



だけど、桔平の力はますます強くなるだけ。



華奢な、その腕からは想像も出来ない。



背が高い桔平に、あたしはすっぽり抱え込まれている。



温かい、腕の中。



このまま、流されてしまいたかった。



ずっと、この腕の中にいたかった。



放さないで。



ずっと、この腕の中に捕らえていて。



そう叫びたかった。



だけど、それを口に出すことはない。



代わりに涙が次か次へと溢れ出て止まらない。



あたしは、この温もりを覚えてはいけない。