「…誰、あいつ?」



すごく低い声で聞かれて、思わず体が強張る。



「あ、え…伊東くん…」



「そうじゃなくて。…彼氏?」



「は…え…ち、違う!違う!伊東くんは、クラスメート」



あたしは、ブンブンッと勢いよく首を振って否定する。



すると、桔平は少しだけ握った手の力を弱めてくれた。



放しては、くれないけど。



繋がれた手の温もりに、嬉しさと切なさの両方を感じる。



この手を、あたしは掴んではいけないんだ。



「ね、手……」



「ん?」



「手、放そう?」



「なんで?」



桔平の鋭い視線があたしに突き刺さる。



……この鋭い目すらも、懐かしいと思ってしまった。



この目は、お華を生けている時の桔平の目と良く似ている。



真剣で、見てるものの真意を見透かすような目。



それが人間でも、お華でも



その本意を知り、探ろうとする、目。