世界で一番大切なもの

「つーかさー、俺放置?」



伊東くんは、困ったような顔をして立っていた。



「あいつ?有名人って」



「そう、あれが橘桔平」



答えられないあたしの代わりに京ちゃんが答えてくれる。



「葵ちゃんと、どういう関係?」



「………」



京ちゃんは、チラリとあたしを見る。



「幼馴染み、だよ」



あたしは、京ちゃんに

「ありがとう、もう…大丈夫」

と笑いかける。



「幼馴染み、ねえ…」



伊東くんは、呟く。



「そう、幼馴染……」



「葵」



京ちゃんがあたしの言葉を遮る。



「気持ちを誤魔化すのは、辛いよ」



「………」



「桔平は、守って…」



「京ちゃん」



あたしは、その京ちゃんの言葉を遮る。



「大丈夫だから」



そう言って、京ちゃんを見つめると



まだ納得はいかなくても京ちゃんはそれ以上は何も言わなかった。