ゆっくり立ち上がって、 ”楓くん”と名前を呼べば 彼は心配そうにカウンターへ 少しだけ身を乗り出してきて、 そっとあたしの頬を撫でる。 「 ・・・・き 」 「 ・・・・なんですか? 」 彼の珈琲はあたしと彼の丁度 真ん中に置かれている。 止まらない涙は彼の手を濡らして、 あたしも、彼と同じように 少しだけ身を乗り出した。