Black Coffee.






「 ソレは、菜緒さん限定です 」


「 ・・・・え・・・? 」





信じられないほどか細い声が
喉の奥底から出てきて、
落としていた視線を彼へと戻せば
以前と変わらない優しい笑顔を向けられた。





「 最近、って言っても一ヶ月前ですけど
  菜緒さんずっと”悩んでます”って
  顔してたんですよ 」


「 そうですか? 」


「 そうですよ。今にも泣きそうな顔したり、
  何か悩んでるんだろうなって思って
  菜緒さんが出て行ってからずっと
  こればっかり作ってました 」





あたしが楓くんを忘れようとしていた
この一ヶ月間、楓くんは逆にあたしを
思ってこのドリンクを作ってくれていた・・・の?





「 市販の栄養ドリンクの方が効果も
  味も、きっと良いんですけど・・・
  菜緒さんの力になりたかったんです 」





本当に、どこまでも真っ直ぐで
どうしようもない天然。