「うそ、おいしいじゃんこれ!」


「でしょー?いっぱい練習したんだからぁ」


ダイニングテーブルで向き合って座り、私はお姉ちゃんが作った肉じゃがを食べて声をあげた。


…信じられない。

料理もまともに出来なかったお姉ちゃんが、こんな美味しく肉じゃが作れるようになるなんて。


「優ちゃんのお母さんに習ってね、味加減とか聞いたの。

おうちで練習しようと思って、1週間くらいずっと肉じゃが作って、やっと美味しく出来るようになったのに、

優ちゃんてば“肉じゃがはもういい”って、

そんでそのまま出張行くんだもん。

帰ったらまた食べさせるんだから」


「そりゃ1週間も肉じゃが続けば、さすがに優兄ちゃんも嫌になるよ」



私は優兄ちゃんに同情した。


「だって優ちゃん、肉じゃがが大好物っていうから」


お姉ちゃんは拗ねたように、ぷくっと頬を膨らませる。


「それでも限度ってものがあるじゃん。

お姉ちゃんだって毎日オムライスじゃ飽きるでしょ?」


「私は平気よ?毎日オムライスでも」


私は小さくため息をついた。



「で、お腹の子は順調なの?」


「そうそう!今日ね、定期検診行ってきたの」



そう言ってお姉ちゃんは立ち上がり、カバンから何かを取り出して持ってきた。


「見て、これ」

「これ…エコー写真?すごい」


差し出したのは、胎児を写したエコー写真だった。

白黒で、どこが頭になるのか形がよく分からなかったけど、私はまじまじと見つめる。




「…コレ、なーんだ?」


お姉ちゃんが写真の真ん中あたりを指差して聞いた。


「なに?」




「…立派なモノ♪」




そう言ってお姉ちゃんは、嬉しそうに微笑む。