「ありがとう、優兄ちゃん」
涙を拭って、顔をあげた。
その時、視線の先に涼の姿があることに気づく。
「涼!!」
涼は目が合うと、表情を歪め走って家の中に入っていった。
「涼もまだまだガキだからなぁ」
優兄ちゃんがやれやれとため息まじりで笑う。
「咲、あんな弟だけど涼の気持ちは本物だよ。
兄貴の僕が保証する」
私は涼の後を追った。
家に入り、階段を上がる。
2階奥が涼の部屋。
私はノックもせずに勢いよくドアを開ける。
涼はベッドのに座って、驚いて顔を上げた。
「なんだよ!勝手に入ってくんな!」
「ずっと無視してたのは涼の方でしょ?!
私の話、聞いてくれたって良いじゃんか!」
「何を聞くんだよ!
結局咲は、兄貴なら甘えられるんだろ?
兄貴の前ならそうやって泣けるんだろ?!
どうせ俺は弟だから…なんで、俺には…」
「涼…」
涼は悔しそうに言った。
膝の上で力一杯こぶしを握っている。
その様子が、何だか泣くのを我慢しているようだった。
そっか…
涼も気にしていないワケじゃなかったんだ…
本物は、平気なんかじゃなかったんだ。
「そりゃ俺は兄貴みたいに大人じゃねぇし、うまく優しくも出来ないけど…
だけど俺だって咲のこと、守りたいって思ってんだからな」
「…涼…わかったから」
「わかってねぇよ!!」
涼が私に向かって怒鳴る。
その瞳は、今にも泣だしそうだった。
「咲は全然わかってない!
俺、咲のこと好きって言ったよね?
これからは俺がずっと咲のそばにいるって言ったよね?!
それがどういうことか、咲は全然わかってねぇよ」

