優兄ちゃんの顔を見たらなんか安心して、張り詰めていた糸が切れたみたい。
涙は次から次へと流れ出す。
「うっ、うぅ〜」
「ど、どうした、急に?咲、大丈夫か?」
急に泣き出した私を見て、優兄ちゃんは驚いているようだった。
「うっうっ、わ、私、最近全然ダメなの。
大人なのに…もっとしっかりしたいのに…」
「咲、お前は昔からそうだけど、咲は充分頑張ってるだろ」
私は首を横に振った。
「全然…私なんか全然ダメだよ。
自分のことでいっぱいいっぱいで、すぐ周りが見えなくなるし…
相手のことまでちゃんと考えられない自分勝手な人間だもん」
優兄ちゃんが、そっと私の頭を撫でて言った。
「誰だってそんなもんだよ。
余裕のあるやつなんて、大人でもなかなかいないよ」
「…でも…涼だってきっと呆れてる…“大人のくせに”って…
こんな子どもみたいな私、ヤダぁ…」
涼の前では、大人でいたい。
こんな弱虫な私、涼には知られたくない。
だって私がこんなだったら、涼は誰に甘えるの?
いつも冷静で、ぶっきらぼうで、私なんかよりしっかりした涼。
だけどその性格が、私を守るために形成されたものならば…
私には、甘えて欲しい。
大人ぶらなくていいから…
私を守ろうとしなくて良いから…
私の隣に、居てほしい。
「咲、大人だとか子どもだとか、そんなことにこだわっても仕方ないよ。
大切なのは、自分の気持ちに素直になることだ」
「…素直?」
「そう。自分の気持ちに素直になる。
そうすれば自ずと、相手を思いやれる」
……そうだ。
私は、自分の足で歩くと決めた…
自分の気持ちに正直になるって決めたのに……
自分の気持ちを見失ってばかりだった。
だけどやっと、わかった気がする。

