「なに?」
「いや、何でもない」
涼がそう言って、ふいと顔をそむける。
「何よ、気になるじゃんか」
「それより、明後日」
「え?」
「今度こそ、絶対早く起きろよ」
「え…」
「デート。映画、公開終わっちまう」
“デート”という単語に心臓が飛び跳ねた。
普段、私には縁のないものすぎて……
「朝、10時に迎えに行くから。
わかったか?…おい、返事!」
「はっ、はい!!」
私は慌てて声を上げた。
涼はそんな私を、どこか疑いの眼差しで睨む。
「なによ、その目は!」
「…いや…今度起きてなかったら覚悟しとけよ」
気付いたら家の前だった。
「じゃ、おやすみ」
ポンと軽く、私の頭に手を乗せた。
「…うん、おやすみ」
そう言って涼は、家の中へ入っていく。
その姿を見届けて、私も家に入った。
…涼は一体、どういうつもりなんだろう。
あれ以来、私のこと好きとも言わないし、
抱きしめたり手を繋ぐことすらないし…
だけどこうやって迎えに来たり、デートに誘ったり…
それって、幼なじみとして?
……よくわからないよ、私には。

