「うーん…わかんない」

「えっ?」


その言葉に拍子抜けする。



「わかんないって、そんなことないでしょ!

幼なじみと恋人じゃ全然違うよ?」


「だって気付いたら、いつもそばに優ちゃんがいたから…

だからこれからもずっと、一緒に居れたらなぁって思ったからかなぁ」


お姉ちゃんは首をかしげながら答えた。


「でも、“一緒にいる”なら幼なじみでもいいじゃない。

どうして恋人になる必要があるの?

むしろ幼なじみなら、ずっと変わらず幼なじみのままでいられる。

恋人だと、いつか別れがくるかもしれないんだよ?」



そう言って、私は初めて気付いた。


…そっか。


私はきっと怖いんだ。


涼と“幼なじみ以上”の関係になるということは、


二度と“幼なじみ”には戻れないということなんじゃないかって…


そう思ったら怖くて、寂しいんだ。



「あのね、咲」



お姉ちゃんがそっと私を呼ぶ。



「…私も優ちゃんに好きだって言われるまでは、優ちゃんのことそんな風に考えたことなかったの」


「えっ、そうなの?」


意外だった。


てっきりお姉ちゃんもずっと、優兄ちゃんのことが好きだったんだと思ってたから。





「優ちゃんに好きだって言われて初めて、

優ちゃんが私を必要としてくれることを知った。

それまでは私が優ちゃんを必要として、優ちゃんに与えてもらってばかりだった。


…それが突然、私も与えたいと思うようになったの。


優ちゃんが今まで私にしてくれたように、


私も優ちゃんに与えたい、支えになりたい、



…この人を守りたいってね」



お姉ちゃんの言葉に、心臓が大きく鳴った。