「これ……どうしたんですか?」

「どんな場所でも、頼めば色々とやってくれるようになってる。お前が気にすることはないよ」

「でも――」

「それに、今日はお祝いだからな」

「お祝い……?」

 意外な言葉に眉を寄せると、静さんが食卓の脇に置かれていた本棚から、一冊のファイルを取り出す。中から抜き取って見せてくれたA4の用紙には、アレンジメントされたお花と抹茶の入った茶器の写真。

 その下に書かれた文字と記事の内容に目を通した私は、嬉しくなって歓声を上げた。

「抹茶な風に誘われて、京都店完成間近――これ、私のお花だ!」

 伝統ある茶道の世界を、長く受け継いできた京都。本場とも言える土地で、はたして受け入れられるのかという不安もあった新旧融合、和洋折衷ともいえる静さんのビジネスが認められたことを証明する記事だったのだ。

 しかも、アップで映されているお店のイメージで使われているのは、私が手がけたアレンジメントだった。

 といってももちろん葉子さんや静さんの助けを借りて、だけれど――どうしても夕顔の花をメインで使ってみたいと言った私のために、撮影も夕方に変えてもらったものだ。

 あの、儚い命の優しい花。静さんと私が出会い、言葉を交わすきっかけになった美しい夕顔を中心に、白と水色系の小花で飾ったアレンジメントには、イメージにとらわれず、素敵な出会いを受け入れてほしい、という願いを込めていた。

「そうだ。お前の技術とイメージが、大手の雑誌にも認められたという印だからな。一番に見せたかった」

 出版社から送られてきた、ゲラという出版前の原稿なのだと説明してくれる。静さんの微笑みにもどこか誇らしげな思いが見えるようで、たまらなく嬉しくなった。