――そっか……浮気じゃ、なかったんだ。
胸に染み入る嬉しい結論が二つあることなんて、雅浩は想像もしないんだろう。勝手に誤解して、早とちりして、落ち込んで――まるでピエロだ。もし雅浩が知ったら、あたしらしいとあきれるだろうか。それとも笑うだろうか。
きっと後者だろうと思えるのは、無口だけれど優しい眼差しで見つめていてくれる、彼の性格を知っているから。
「――だよね。雅浩にかぎって、そんなこと」
あんまりほっとして、思わず呟いた言葉に、「ん?」と反応されてあせってしまう。遅刻のお詫びに、とおごってくれたホットココアを飲んで、笑ってごまかした。
「あ、そうだ……はい、これ」
どうぞ――なんてふざけて頭を下げながらテーブルの上に置いてみる。本当は胸がドキドキして、手が震えそうになったのに気づかれないように。
受け取ってくれることも、きっと喜んでくれるだろうこともわかってる、はずなのに――なぜか緊張してしまうのは、やっぱり今日が特別な日だから、なんだろう。
たった一人の、世界で一番の相手に自分の想いを伝える日。チョコの甘さに潜ませて、本気の『スキ』を届ける日。
だから――あたしは、何でもない顔をして笑うんだ。マンネリで、一緒にいるのが当たり前で、お互いに慣れきってて、わざわざ渡す必要なんてないんだけどね、みたいな顔をして。
そして、彼も同じように仏頂面で受け取るの。いいのに、俺、甘い物そんな食わないし、とかなんとかぶつぶつ言いながらも、一瞬だけメガネの奥の瞳が優しくなって。
「――さんきゅ」って照れくさそうに言ってくれた雅浩とあたしは、視線をからめた。
胸に染み入る嬉しい結論が二つあることなんて、雅浩は想像もしないんだろう。勝手に誤解して、早とちりして、落ち込んで――まるでピエロだ。もし雅浩が知ったら、あたしらしいとあきれるだろうか。それとも笑うだろうか。
きっと後者だろうと思えるのは、無口だけれど優しい眼差しで見つめていてくれる、彼の性格を知っているから。
「――だよね。雅浩にかぎって、そんなこと」
あんまりほっとして、思わず呟いた言葉に、「ん?」と反応されてあせってしまう。遅刻のお詫びに、とおごってくれたホットココアを飲んで、笑ってごまかした。
「あ、そうだ……はい、これ」
どうぞ――なんてふざけて頭を下げながらテーブルの上に置いてみる。本当は胸がドキドキして、手が震えそうになったのに気づかれないように。
受け取ってくれることも、きっと喜んでくれるだろうこともわかってる、はずなのに――なぜか緊張してしまうのは、やっぱり今日が特別な日だから、なんだろう。
たった一人の、世界で一番の相手に自分の想いを伝える日。チョコの甘さに潜ませて、本気の『スキ』を届ける日。
だから――あたしは、何でもない顔をして笑うんだ。マンネリで、一緒にいるのが当たり前で、お互いに慣れきってて、わざわざ渡す必要なんてないんだけどね、みたいな顔をして。
そして、彼も同じように仏頂面で受け取るの。いいのに、俺、甘い物そんな食わないし、とかなんとかぶつぶつ言いながらも、一瞬だけメガネの奥の瞳が優しくなって。
「――さんきゅ」って照れくさそうに言ってくれた雅浩とあたしは、視線をからめた。

