「…日向」 私は1年以上前のあの日から、“日向”と呼ぶようになった。 「昨日意識戻ったらしいけん…入ろ?」 翔太に腕を引かれて病室に入る。 そこは、昔私が入院していた部屋。 「曽我部…久しぶり!」 翔太が声をかけると、ゆっくりこっちを向いた日向。 「ありがとう」 悲しそうに笑う日向。 「美春…思い出したよ。12年前のこと」 私は持っていた鞄を床に落とした。