「……ありがとう」

 素直にお礼の言葉が出せる。

 いえ、と照れながらショウマは、片膝を付いてわたしに頭を垂らした。
「モモ様の首に、このチョーカーを付ける名誉を与えていただけますか?」

「勿論にゃ」

 わたしは後ろを向いて、ショウマの動きを待つ。

 ショウマの大きくて長い腕が持つ、薄いピンクのリボンのチョーカーがわたしの目の前に回る。

 シルクのリボンに合わせて白い絹糸で刺繍されたわたしの名前。

 ──名前……


 な・ま・え!?


 刺繍された名前を読んで、わたしの毛がぶわりと逆立った。

「ショーマーーーー!!何よこれ!?」

 ぐいっとヒョウマの手からチョーカーを引ったくり、ポカンとしているショウマに叩きつけた。

「えっ?えっ?」

 本気で驚いているようだけど、私の方がもっと驚いたわ!

「“モカ”になってるにゃ!」

「えーー!?」

 慌てた様子でショウマは刺繍を確認する。

 みるみるうちにショウマの顔が青ざめていく。

「──そんな! 店側のミスですよ」

「本当にミスなのにゃ?ショウマが二つチョーカーを用意してあって相手を間違えて渡したんじゃ無いのかにゃ!」

「そ、そんなことは……!」

「アビシニアン家のモカ様への贈り物でしょ! うにゃー!」

「ちょっ! アビシニアン家のモカ様とは面識はありますが、それだけですよ!」

「確認しなかったショウマが悪いにゃ!」

 ヒールを履いたまま、ショウマを足蹴り連打。


 ゲシゲシゲシゲシゲシ


「いたたたたたたたた!! モモ様! ヒールの靴で足蹴りは凶器ですから!」

「黙れにゃ!!この浮気者!おっちょこちょい!」

「いや、ちょっと!浮気って……!事実無根──! 痛い痛い!」

「ショウマのバカ!アホ!」

「肉球で蹴られるのは気持ちが良いけど! ヒールは勘弁してください!」

「ショウマの変態!気持ち良くなるまでヒールで蹴り続けてやるにゃ!!」


ゲシゲシゲシ


「……あれ?何だか気持ち良くなってきた……」