欲しくて欲しくてお父様におねだりしたんだけど

「ニャオン国の伝統を守るのが皇家にお仕えするのも使命なのにゃ。異国の物を欲しがるとははしたないにゃ」

と、あっさり却下。

 華族のお姫様って、お金を自由に使えないのよ。
 
 出納にしっかりチェックされてしまうの。

 でも、諦められない。

 こんなに「欲しい!」と思う気持ちは初めてなの。

 分かってくれないお父様を思い出し、鰹節をガジガジかじりながら何か良い手はないかしら?

 と悶々としていたら、ショウマが内職を勧めてくれたわけ。

 ハンカチの刺繍と手袋のビーズ。

 これなら学校の授業でもやってるし、ボランティアで日常的にやっていたから、わたしにも出来る。

 一枚三十円の世界だけど、怪しまれずに出来るバイトってなかなか無い。

 一日十枚ノルマでせっせと縫い物。

 傍らで暇だからとショウマもせっせと鰹節を削る内職。

 ……美味しそうじゃないのよ。

 離れて削りなさいとショウマを足蹴りしながら三ヶ月。

 目標額達成!

 そんなわけで今日、ショウマを買い物に行かせたわけ。