少し歩いて屋敷の方を振り向けば、寝室の窓際に白い影が見える。
 
 自分が出掛ける時、最後はあの場所でお見送りをしてくれる。



 全く不思議な猫だ。

 まるでこちらの言葉を理解しているように動く。

 時々、人間のようなに笑ったり鳴いたり、媚びたり。


 出会いからして変わっていた。

 実家に手入れもせずに放置してある、大きく成長した桃の樹がある。

 自然に任せ剪定も何もしていないので、桃などなっても小さく歪で甘くなど無い。

 祖父が気まぐれで買って植えた代物だ。

 モモはその一枝に乗っていて降りれなくなっていたのだ。

 可哀想に思い、助けてやって、なついたのでそのまま連れてきた。


 夏に実家の妹から手紙が届いた。

 妹とは滅多に手紙のやり取りをしないので珍しいなと思いながら、封を開き読み進めて行った。

 例の桃の樹に実が生った。
 どういうわけか一つ一つが大きくて、色味が良い。
 一つ取って食べてみたら、これが汁が滴りとても甘い。
 食べてみて
 と一緒に送られてきた桃三つ。

 食べてみたら、とてつもなく甘い。

 不思議なこともあるものだ。

 モモにも何切れか食べさせながら呟くと、

 助けてくれたお礼よ

 と言ってるかのように

 なおん
 
 と鳴いた。