あなたが居たから…

リョウくんはあたしを部屋の奥に連れて行くと『ここに居て』って言って、玄関のドアをチェーンをかけたまま開けた。少し開いたドアの間から『リョウ~酒くれよ。リョウ~』って不気味な声がした。リョウくんはチエッって舌打ちして、キッチンのテーブルの上から、カギを取ると、チェーンを外して、外に出た。そしてドアにカギを掛けた。あたしはリョウくんが心配でドアに近づいて、ドアについてる丸い穴から様子を伺った。外ではリョウくんが男の人に『酒はねーよ!』『部屋から出てくんなっ!って言ってんだろ!』って言って、向かいの部屋のドアを開けて、その中にその人をドンと押して、部屋の中に入れ、カギを掛ける音がした。あたしはそれを見て、リョウくんが戻って来る前に居てって言われた場所に戻った。ガチャっとカギの開く音がして、リョウくんは戻って来た。そして『ごめんな。怖かったろ。恥ずかしいけど、アレが俺のオヤジ…』って言った。