空賊。

「……これの家が……最後の薬屋……」

どうか……どうか……そう願いをかけて、扉を叩く。

だがいくらまっても、いくら叩いても誰も出て来なくて。
体中の力がふっと抜けてしまう。
……その場に座り込み、頭を抱える。

「……もう……駄目か……」

そう呟いて夜空を眺め見ていると、“お嬢ちゃん”という声が聞こえてくる。

それは聞き覚えのある声で。
荒い息を吐く声の主に、スタージャは駆け寄る。

「おじさん……!!もしかして……」

「あぁ、家に必要な物を取りに入ったらお嬢ちゃんの姿が見えなくてね。
探したよ。
で、お嬢ちゃんの知り合いはどこだい?」

優しく微笑むおじさんに、胸の中に温かいものが流れ込んでくる。

こんな世の中にも優しい人がまだいたのだという喜びと、これでユサが助かるという安堵の気持ちだった。