空賊。

「誰か……誰か!!!!」

そう叫んでも、何も変わらない。
ただ目の前には闇が広がっているだけで。

余計に、自分が無力な存在なのだと思い知らされる。

……あたしが貴族の生まれだったら、何か変わっていただろうか。
あたしが貴族だったら……
自分勝手な我儘令嬢に成り果ててしまっているのだろうか。

今更そんなことを考え思ってみても、何も変わらない。
走って走って……ユサという少女の為に。

―――誰か……ユサを、助けてあげて。

そう思って立ち止まった場所はあの時の薬屋の前で。
……ここしかないと思った。

“あの人当たりの良いおじさんは助けてくれる”そう思うしかなかった。

薬屋の扉に駆け寄り、扉を叩く。

「おじさん……おじさん!!助けてください!!おじさん!!」