空賊。

「良いなんて言うな、ユサ。」

力強い声に、か細い声は“もういいの”と告げる。

「私の為に……無理しないで……?
お兄ちゃんこそ、倒れて……しまう……」

そう言った次の瞬間、か細い声は苦しそうな咳へと変わった。

「ユサ……おい、ユサ……ユサ!!」

ユラの慌てた声が耳に届いたスタージャは、走り出していた。

……見てはいないけど、このままだと長くはもたなそうな感じだ。
医者に見せたくても、医者はこの町にはいない。

どうすればいい。どうすれば……

スタージャは無意識のうちに歯ぎしりをする。

何で、肝心な時に医者がいないんだ。
一番困っている者の近くには何もない。
貴族たちには何でも揃っているというのに……

何が違う。一体何が。
どうしてこんなにも待遇が違うのだ。