「いや……あの……名は?」

とっさに名を聞いてしまう。
明らかに不審なものを見る目でこちらを見る男。
“何をやっているんだ”と心の中で自分を叱咤する。

「……ユラ。」

聞こえるか聞こえないか位の小声で名を告げる。

「ユラ?」

小柄な男にはぴったりそうだが、男の持つ雰囲気のせいだろうか。
とても似合わないと感じる。
だが、ごつそうな名だったとしても似合わないと感じるだろう。

「あんたは?」

そう問われ、“あたしはスタージャだ”と告げる。

「スタージャか……」

そう呟いたかと思うとユラは黙り込む。
腕を組み、建物の壁に体を預けるその姿は何だか様になっている。
ユラは静かに物思いに耽っているようだった。

「な、何?」