「おい、お前どうしてこんなこと……」

自分をを引っ張っていく男にそう問えば、“静かにしろ”と言われる。
されるがままに、スタージャは男に連れられてどんどんと路地の奥へと入っていく。

「待て―!!」

そんな声が少しずつ遠くなっていき、やがて街中へ消えた。

「……やっと撒けたな。」

そう言った男は、少しも息を乱してない。
何十分も走ったのにだ。

「あ、ありがとうな。」

スタージャはお礼を言うが、男は聞こえてないのか無言だ。

「ありがとう。」

今度は聞こえるように言うと、首を縦に振られる。

「どうして……あたしを助けたんだ?」

見ず知らずのあたしを。
巻き込まれるかもしれないのに。

「……分からない。」

ただ、一言男はそう言った。
その言葉にスタージャはまじまじと男を見る。

ラルクと同じく小柄だが、筋肉質で声も低い。
その身に纏っている雰囲気はまさしく、絶望を知った者のものだった。