空賊。

それは、スタージャの使っているドラゴンは“伝説のドラゴン”だからだとか、
スタージャ自身、ある“特殊な力”を持っているからだとか、

長になったわけには様々な理由があるが、
人の上に立つことが当たり前になりたくないのだ。

慣れというものはとても恐ろしい。
それが無くなった時、人は弱くなる。
一人で生きていけなくなる。

いつ、“それ”が無くなるのか分からないのだ。
特にこんな世の中では。

……しかし、長としての立場もあるのだから難しいという所もあるのだが。

“人の上には人はいらない。
ただ代表する者がいるだけで、決して人の上に人は成り立たないのだ。”

そんな言葉が何かの本に書いてあった気がする。

「……で、何だ?そんな改まって言うことか?」

そう言ってスタージャは、ラルクの瞳をじっと見つめる。

闇のような漆黒の瞳。
その瞳はくりくりと大きく、ブラックホールのように吸い込まれそうだ。

「スタージャ様にお願いがあります。」

そう言って、片膝を地面につけ頭を下げるラルク。

「……それは何だ?」

スタージャは、ラルクの顎をくいっと持ち上げて顔を上げさせる。
瞬き一つしないラルク。
そこには、強い意志が感じられる。