空賊。

「ラルク、そっちの方は終わったか?」

スタージャはラルクが手当てをしていた男の方をちらっと見て、そう問う。

「あぁ、終わりましたよ。
しかし、思ったよりも傷が深いです。」

ラルクはそう言い、“二カ月は大事を取らないと。”と言葉を付け足す。

「そんなにか?」

スタージャは小さく呟き、うーんと唸る。

“二か月”ということは、そうとう酷い切り傷だったのだろう。
ここには満足な薬も無いし、治療も受けさせてやれない。
ただ、止血をして痛みに耐えるしかないのだ。

……何とかしてやりたい。しかし……

「スタージャ様。」

そう、改まってスタージャの名を呼ぶラルク。

急に名を呼ばれ、
考え事をしていたスタージャの意識はラルクの方へと移る。

「……様は付けるな、様は。スタージャで良い。」

スタージャは、そう言って頭を掻く。

様を付けられるのは、いつまで経っても慣れない。
と言うか、慣れたくないのだ。

スタージャは空賊“ドラゴン”の長という地位に立っていた。