空賊。

「マーティー、助かった。」

そう言って、スタージャはブラーに跨る。
そんなスタージャを見てマーティーは驚愕したようで、口をぱっかりと開けていた。

「……何をそんなに驚いている。」

眉間に眉を寄せているスタージャに、

「……何で殺さない?僕は敗者だ。一思いに殺ってくれ。」

と言って、目をきつく結ぶマーティー。
その言葉に、はっとする。

……何故……?
このあたしが、殺すのを忘れていた……?
……忘れてどうする。ここは戦場だ。

心の中に、何とも言えない感情がぐるぐると渦を巻く。
しかし、そんな思いを表に出さないよう、体をマーティーに向きなおす。

「……お前は殺されたいのか。」

……本当に殺されたいのか。
スタージャは冷酷な表情をしながら、マーティーに問う。

何も言わなければ死ななかったものを。
そんなに死にたいのなら、
いくらでも殺してやる……と、そう思いながら。

「殺されたいわけないだろう。
だが……ここで殺されないのも、長の名折れ。殺してくれ。」

マーティーはそう言って、
胸元から短剣を出しスタージャに差し出してくる。
“さぁ、殺ってくれ”と、スタージャに訴えてくる力強い瞳。