スタージャは剣を鞘に戻し、マーティーに問う。
そんなスタージャの行動に、
すっかり安心しきった表情でマーティーは話し始めた。

「……これは、サウリーマウンテンに伝わる言い伝え。
サウリーマウンテンの所の山賊は皆知っている。だが……」

だが……何だよ?
他の奴も知っているという不安と焦りから、スタージャは無意識に舌打ちをしてしまう。

……まただ、直んねぇなこの癖。
そんなことにも少し腹が立つ。

戦場では、敵に焦りや不安などの心情をよませてはいけない。
そんなものは、一瞬の隙を作るのだ。
だからこそ、敵前では気を付けていたのだが。

前にいる敵―――マーティーが全くと言っていいほど敵に思えないのだ。
むしろ、手間のかかるほっとけない奴にしか思えない。

……まずい。そう思っても、マーティーは敵なのだ。

どんなに山賊の長に見えなくても。
敵は敵。
それ以上でもそれ以下もない。