顔を上げると、あの先輩がわたしの方を真っ直ぐに見ていた。 綺麗な瞳だ。 そうして先輩にしばらく見惚れていると、 「あんた、誰?」 ―声を掛けられた。 「榎本咲希、です。」 「ふぅん。」 わたしが答えると興味なさそうに呟き、本に視線を戻した先輩。 正直、びっくりした。 今までみんなその後ずっと喋り掛けてきたから。