「俺は前沢さんの
美しさにやられてるよ」
「やだーっ。
石田くん、私には修ちゃんっていう
決まった人がいるの」

石田と裕子が盛り上がっているなか、
私はその少し後ろで
影を薄めながら、歩いていた。

「なんか、俺たち取り残され
ちゃったね」
「あっ……」

さっきまで石田と歩いてた
もう1人の男子に
声をかけられた。

こいつも、私と同じクラスだ。
確か、学級副委員長で……

「伊野、伊野燈紀」
「えっ」
「今、思いっきり
こいつ名前なんだっけ?って
顔してたよ、八田堀」
「あっ~、ごめん」

少し、居心地が悪くなったが
そんな私を見て微笑む伊野を
見ていたら、
別にいいのかな
とか思い始めた。