「い、石田……」

やった!早速賭けに勝った!
そう思い嬉しくなって、つい石田の方に
かけよった。

「早く、クラス戻ろう?
燈紀とか、皆心配してるよ?」
「この馬鹿芋がっ……」

石田に強引に腕を引かれ、そして
そのまま強く、強く
抱きしめられた。

一瞬、自分の立場が分からなくなった。

「何、馬鹿な事してるの?離して」
「八田堀……なぁ、分かってる、分かってるけど
少しだけこういさせて」

「嫌」

私は冷たく突き放した。
そして同時にこれが燈紀だったら
どんなの素敵だろう、と思った。

「お前が燈紀を欲しいように、
俺だって……」
「な、なんで……」
「えっ?」

石田が若干力を緩めた時、
私は思いっきり石田の頬をぶったたいた。

「最低最低最低!!
何が欲しいよ!私は燈紀の事なんて
欲しいとは思ってないの!
ただ、ただ好きなだけなの!」

私は茫然とした石田を突き放し、
さっさと帰ってしまった。
見つけなかった事にしよう。さっきまでの
アレは、
全部なかった事にしよう。