恋い焦がれ




今日は、日直だったので、
伊野とは少し話をした後、クラスに向かった。

あーぁ、勿体な…

そう感じながらも、
私は黙々とじょうろに水を入れ、
クラスの花壇に栄養を
そそいだ。

「芋さん、今日はやけに
ご機嫌じゃない?」
「石田、」

石田はいつも伊野と登校しているから、
大体一番乗りに
クラスに着いている。
またしても二人っきりだ。

「別に何もないよ」
「恋に落ちたでしょ?」

私は水を床にこぼしてしまった。

急いで、雑巾を用意して
濡れた所を拭く。

「な、何いってんの」
「俺は、イチオクとの女を
見てきたんだぜ?
芋ちゃんの変化なんてすぐに
解るさ」
「ば、馬鹿ばっかりっ!!!」

私は乱暴にじょうろを置くと
走ってクラスを
出ていってしまった。

少し気にかかったのは、
ちょっと寂しげな石田の顔だった。