「――――ったぼり



―――八田―――」

心地のよい声がうっすらと
私の耳の中に入った。

「八田堀っ!!!」

私は大きく目を見開いた。
目の前には、汗の臭いがただよう、
伊野の姿があった。

「1組優勝したぞっ!!」
「えっ………」
「俺、八田堀の分も
頑張って走ったよっ!!!」

伊野が優しく微笑んだ。
ほとんど競技に出ていないのに、
私は何故か嬉しくて、
涙が出てきた。

「八田堀、泣くなよ~」

困ったように伊野は微笑んだ。
そして、
さっきと同じように、
大きなその右手で私の髪をくしゃくしゃっと
撫でた。


彼の存在があるだけで嬉しくて、
私はまた号泣してしまった。




私、伊野の事好きだ―――――