始まりの合図の銃声が耳の中で響いた
私の順番は14番なので
少し時間があった。

暇だったので、私は石田に
声をかけた。

「石田って彼女いないの?」
「えっ、何いきなり。
もしかして八田堀、俺の事」
「絶対ありえません」

石田は少ししょんぼりとした
顔を見せた。
やっぱりあほに見えるので
そんな姿を見て、私はにやにやと笑っていた。

「まあ、今はいないかな。
昨日別れたんだけど」
「恋人がいない事がほとんど
ないんだね」
「引く?」

石田は私の顔をのぞきこむようにしながらみた。
弟のような顔だったので
私はその一瞬だけ石田の事が
可愛いな、とかんじた。

「引かないよ。
かの在原業平のように愛を探す難破船みたいで、
見た目かっこいいよ」

見た目ね、と私は付け加えた。
石田はなんなんだしー、とかいいながらも
内心嬉しいのかなんなのか
ニコニコとしていた。

そろそろ私の順番だ。

私は立ち上がった。