「解ればよろしい」

私はそう言うと、石田に
大量のプリントを手渡した。

「な、何これ」
「係の仕事。」

石田は少々呆れ気味だったが
段取りを教えると、
意外に黙々と仕事を続けていった。

「八田堀ってさ、
好きな人作んないの?」
「生憎、その様な話題には
疎いんですよ」

ふーん、と石田は鼻を鳴らすとにやにやしながら
私を見た。

「でも、さっき、燈紀に
手を振られた後めっちゃ顔
真っ赤だったよ」
「なっ!!!!?」

さっきの顔見られたのか、と
思うと恥ずかしくて
私はみるみる体温をあげていった。

「残念ながら、
男子にそういう事されるのも
なれてないんですよ」

私は少し自虐的に呟く。

「でも、燈紀もそういう浮いた
噂聞かないよなー
いっそのこと、狙っちゃえ」
「わ、私は伊野の事は、
友達としか思ってないから!!」


っていうか、
そんな事言われると変に
伊野の事意識するようになっちゃうじゃんか。


石田のあほっ!!



私は、首まで赤く体を染めながら
プリントをホッチキスで
とめるという、地味な作業を
続けていった。