宮城 十利
ミヤギ トオリ
去年の春、俺は、
某有名進学校へ入学した。
翔蘭高等学校。
「高校でも勉強頑張ってやる」
そんな気持ちは
多分、人一倍強かった。
はずだった――――。
父親は大学病院の名医師である。
俺には三つ年上の姉がいて、
2人姉弟の次男坊だ。
(甘やかされて育ったとか言われるけど、
オムツもヨチヨチ歩きもお喋りも
成長は早かったほうだし、
将来有望とか言われたもんだ。
生まれた瞬間〜小5までは、
俺がイチバン華々しい時代だ。)
だから、俺はゆくゆく
お父さんの病院の後継者となる。
しかし、最近憂鬱な気分が続く。
なんだか分かんないけど
生きる活力が薄れている。
毎日学校に通い、
特進クラスでもそこそこの点数を取り、
家に帰っては勉強し、
就職氷河期にぶち当たることなく、
病院で白衣を着て人の命を助ける。
順風満帆?平々凡々?
俺はこの先に、やりたい事が欲しかった。
バンドを結成してモテモテライフ。
彼女を作ってリア充ライフ。
合コン三昧でアゲアゲライフ。
学校帰りにナンパしまくり!!
とか、色々。
まあ、女ってのは必要だな。
「十利!まだここにいたの?」
俺を呼ぶ聞き慣れた女の声。


