「…なの!……でさぁ……マジ春の顔…!」

部屋の前まで行くと華織の声がするとともに、"春"という単語が聞こえた。

”私のこと?何を話しているの?”私は少し気になり、悪いと思いつつ、ドアに耳を付けて中の会話をうかがった。

「本当にウケた。だってさ春、うちが助けたときワンワン泣いててさぁ、どんだけ泣くの?こいつ。って思ってさ。だいたい家に帰ってたら、助け行かないし。めんどくさいもん。」

そう華織が話していた。

「春って馬鹿よね。家に帰ってたら制服脱いでるって気づかないのかしら?だいたい、そんなに辛いなら来なければいいのに。」

華織だけではなく、百合絵もそう話していた。

私は自分の耳を疑った。

“本当は2人も私の事を嫌っていたの?違うよね?”そう思っていても心のどこかでは、“裏切られた。”と感じていた。

“まさか、さつきまで?違うよね?だって小学生の頃から一緒で、ずっと、仲良しで…
なにか言い返してよ!”そう祈っていたが、そんな私の思いは、はかなく散った。

「さつきもそう思うでしょ?」

そう聞く、百合絵に

「うん。そう思う。…春、昔から、自分はいい人だ。みたいな顔してたよ…?」

と言った。