彼女は予想の斜め上を行く

「どういう…意味っすか?」

照れくさそうに笑うだけ。

何も答えてくれない。

俺の寒いセリフのことを言ってるのかな……。

しかし頭を抱き寄せたら当初は睨み付けて来たし、斜め上を常にいく彼女の真意は全く掴めない。

気付けば、金本さんの瞳に涙はほとんどなかった。



「あっ!ヒーローインタビュー始まるみたい」

俺が戸惑っている内にヒーローインタビューの準備は整い、お立ち台には選手が上っていた。

お立ち台に上がるのは、もちろん勇人。

俺達はインタビューを聞いた後、会場を後にした。





ドーム球場を後にし新幹線に乗ると、過剰で異常な1日を提供してくれた斜め上向き女はまたしても瞬息で寝た。

到着してホームに降りると、俺から手を繋いで歩き出す。

感動的な試合を観戦してご機嫌なせいか、彼女はやっぱり何も言わなかった。

今日1日普通になったその光景は、俺と金本さんは付き合っているのではと勘違いさせる。