彼女は予想の斜め上を行く

「かっ、金本さん!?」

金本さんの顔を見て、驚いた。

だって………。

「あの……泣いてます?」

いつでも強気な斜め上向き女の瞳には、今にも溢れそうな涙が溜まっていた。

「仕方ないじゃん……。初めてなんだもん…」

涙をいっぱい溜めた瞳で、俺のことを上目遣いで見る。

可愛いすぎだろ…。

そんな顔で『初めてなんだもん』とか言われたら。

先程まで邪な想いを抱いていた俺としては、おかしな方向に勘違いしてしまいそうだ…。

「初めてって?」

「…サヨナラ勝ち見たの…初めてなの…」

「あっ、そういう初めてね……」

まぁ俺の考えてることなんて、中島先輩と付き合っている時点で100%あり得ないけど。

……改めて考えると、落ち込む現実だな。

「……なに、考えてたわけ?」

なにって、《ナニ》ですよ。

なんて言えるはずもなく、笑って誤魔化した。