―――大きな歓声。
笑顔でガッツポーズをし、そう早くないスピードでホームベースへ走る勇人ともう一人の走者。
マウンドには、肩を落としうなだれる相手チームのピッチャー。
「長野君!勝った!勝ったよっ!ホームランッッ!!」
金本さんの興奮した声で、レフトスタンドへのホームランによりサヨナラ勝ちしたのだとやっと気付く。
それと同時に、右腕に柔らかい感触を覚える。
グラウンドから右腕に視線を移すと、興奮のあまりだろうか。
金本さんが俺の腕に抱きつき、頬を紅潮させていた。
柔らかい感触は、金本さんのそう大きくはなさそうな胸が密着していたから。
………俺、今この瞬間野球好きになったわ。
こんな美味しい状況を提供してくれるとは、なんてナイスなスポーツなんだ。
ありがとう。野球。
ありがとう。勇人。
そんな邪な想いを抱いていた俺は、金本さんの異変に気付く。
