彼女は予想の斜め上を行く

「勇人っっ!!」

車の外では、必死な形相で俺を呼ぶ肉食系女子の姿。

そんな莉緒にお構い無しに、塩原さんはエンジンをかけウインカーを出して車を発進させた。



「いやぁ。切符きられなくて、よかったわぁ~」

あからさまな違反駐車をしていた彩さんはケラケラ笑いながら、後部座席に座る俺に目を向けた。

「あの…彩さん…。どこに向かってるんですか?」

本当は混乱して訊きたいことが山程あった俺の質問に、実に性格の良さが滲み出たイタズラな笑みを浮かべて答えた。

「駅」

「駅?」

「そっ。作品展。行くんでしょ?」

そう言って俺に手渡そうとしたのは、肉食系女子から奪い返した国内最大級洋菓子作品展のチケット。

「でも、俺……」

あんなに欲したチケットなのに、いざ目の前にするとヘタレでビビりな俺は手にすることを躊躇してしまう。

「あ゛~っ!面倒な男ね!つわり真っ盛りの妊婦がわざわざ取り返してやったんだから、素直に受け取れっつーの!」