気付けば人目も気にせず、往来のど真ん中で莉緒の体を引き寄せ抱き締めてる自分がいた。
「…はや…と…?」
珍しく狼狽えて声を上擦らせる肉食系女子の耳元で囁いた。
「より…戻そうか?」
これが三、四日…いや、一週間前だったか定かではないが、とにかくそう遠くはない最近の出来事だ。
二人で外食を済ませて、只今独り暮らしをする部屋の前。
「ねぇ勇人。キスして?」
突然の一言に「は?」と思わず間の抜けた声を漏らす。
「いいでしょ?」
相変わらずの小悪魔的上目遣いで俺を見つめてねだる莉緒。
「いいわけないだろ…」と溜め息混じりに返答すると、絡めていた指を解いて俺に抱き着いてきた。
「ヤダ。するぅ…」
一度言い出すと後には退かない女に駄々をこねられ、根負けして諦めたように抱き締め返した。