彼女は予想の斜め上を行く



「勇人のこと。好きなんだろ?」

観念したように静かに頷く葵を見て、覚悟してたはずなのに胸の痛みを覚える。


「勇人と何があった?」

葵は歯切れ悪く話しづらそうに口を開き、教えてくれた。

俺の出張当日、勇人と二人きりで飲みに行ったこと。

酔っ払った葵を勇人が部屋まで送り届けたこと。

そして―――。

「好きだって。付き合って欲しいって言われた…」

「けど、断った」と弱々しい声で付け足した。

「俺に遠慮した?」

「あたし、そんなに優しい女じゃないよ?」

「それなら、どうして……」

自嘲気味に小さく笑う葵に問い掛けた。

「怖くなったから…かな…」

「……怖くなった?」

「二人きりで面と向かって好きって言われて、正直すごく嬉しかった。でも、それ以上に自分のペースを狂わす長野君に怖くなった」