彼女は予想の斜め上を行く

少しは酔いが醒めたように見える。

それでも……
まだ頬は紅いし。
目はトロンとしてる。

「あの…どいてもらえる…?」

酔いの醒めきらない小さな声。

普段強気なのに、少し汐らしい態度。

心なしか焦ってるような。狼狽えてるような。

俺と同じ気持ちなのかと思わず誤解しそうになるけど、斜め上向き女に限ってそれは有り得ないと思い直した。

「長野君…」と再び催促され、離れがたい気持ちを抑えて「あっ、すみません……」と言って上体を起こそうとしたけれど……。



俺は体を制止させた。

視線は一点に集中。

惚れた女の白い首筋。完璧な男の赤い印。キスマーク。

アルコールが入って。二人きりで。密着してて。

無性に嫉妬と性欲を駆り立てられるシチュエーションに、頭の中で箍が外れる音がした。



「葵……」

名前を呼んだ俺の唇と惚れた女の唇が触れた。