彼女は予想の斜め上を行く

酔っ払いというやつは、唐突に脈絡のない話を始める節がある。

「長野君。イメチェンしたよね~」

そう言って、金本さんは距離を縮めてきた。

肩と肩が触れる。

俺が懸念していた状況。

頬は紅潮してるし。
瞳はトロンとして潤んでるし。
バニラの香りはするし。

その上、「真っ黒くしたね~」と言いながら俺の髪に手を伸ばして触れてくるし。

「……変すか?」

箍が外れないよう葛藤しながら、尋ねた。

「ううん。カッコいい~。好き~」

間の抜けた笑顔でサラッと言われた。

……………落ち着け。俺。

こいつは、酔っ払い。
こいつは、酔っ払い。
こいつは、酔っ払い。

真に受けたら、負けだ。

そもそも俺自身に向けられた言葉じゃない。

《カッコいい》のも。
《好き》なのも。

髪型についてだ。